地方自治体のユニークな条例

九州で風変わり条例が続々制定されている。

地方自治体が独自に定める条例には、その地域の特性が色濃く出る。九州7県にも風変わりな条例が数多く存在し、自治体のご当地事情が透けて見える。条例になじむか疑問符がつくケースもあるが、産業振興やまちおこしのアピールに風変わり条例が果たす役割は大きい。

おもしろい条例名やそれに至ったいきさつなど盛りだくさんなので、ブログを書く手間も省けることから  以下、列挙することにした。


鹿児島県いちき串木野市の市議会で6月、日本初となる 「本格焼酎による乾杯を推進する条例」 が可決、成立した。同市は焼酎生産が盛んな鹿児島県の中でも、霧島市に次ぐ蔵元8カ所がある。人口3万人の市にとって、焼酎は主要な地場産業だといえる。

いちき串木野市でも、飲み会は 「とりあえずビール…」 で始まることが多い。もちろん、「まずは焼酎!!」 と焼酎で乾杯しなくても罰則はない。同市食のまち推進課の担当者は 「ビールを敵視するつもりはありません。焼酎への愛着を根づかせるのが目的です」 と語った。


名称や条文そのものが突飛な条例もある。

城下町の風情が残り、九州の 「小京都」 と呼ばれる熊本県人吉市に平成20年、こんな条例が誕生した。その名も 「子どもたちのポケットに夢がいっぱい、そんな笑顔を忘れない古都人吉応援団条例」  市企画財政課の担当者によると、おそらく日本一長い条例名だという。

しかも前文は 「線路の遙か向こうに憧れを追いかけていたあの頃、小さな幸せが子どもたちのポケットからこぼれ落ちそうで…」 と、法例には似つかわしくない文学的な文章がつづられる。

これだけでは何を定めた条例かさっぱりわからないが、自治体に寄付をすると同額の税控除が受けられる 「ふるさと納税」 に合わせ、寄付金を財源にまちづくりを進める条例だという。

なぜ、こんな長い条例名にしたのかという疑問に 「たくさんの言葉を入れれば、インターネット検索でヒットしやすくなり、寄付がふえると思いました」 と担当者。ところが、あまりに文学性を追求したため、寄付に関する言葉がなく、市の思惑とは逆にネット検索ではヒットしない。制定以降5年間で集まった寄付金は853万円と少額で、まだ活用方法は決まっていない。


変わった名称では、福岡県大牟田市が平成4年に制定した 「人生トライアスロン金メダル基金条例」 もある。

スポーツとは関係なく、百歳を迎えた高齢者に金メダルと賞状を授与する条例だ。長い人生を、水泳、自転車、マラソンの3種目で競う過酷な鉄人レース、トライアスロン五、六人だった金メダリストは高齢化が進んだこともあり、昨年度は49人にふえた。


名物の振興や名称に工夫を凝らしたほほえましい条例の一方、治安悪化という深刻なご当地事情を背景にした条例も存在する。

福岡県は6月、県迷惑防止条例7条 「粗暴行為の禁止」 に 「模造爆発物等を置く行為の禁止」 の条項を追加した。模造爆発物、つまり偽手榴 (しゅりゅう) 弾などを意図的に公共の場に置く行為を禁じる条例で、全国でも類を見ない。

福岡県では、23年3月に九州電力や西部ガスの経営者宅に手榴弾が置かれるなど企業テロが相次いだ。手榴弾に関する事件が平成21年以降11件も発生し、手榴弾9個が押収されている。

この非常事態を背景に、今年4月15日、北九州市のJR小倉駅近くで模造手榴弾騒動が発生した。手榴弾とみられるものを市民が発見し、現場はパニックに。半径50メートルが3時間にわたって封鎖され、県警の爆発物処理班も出動した。

爆発物は真贋の判別が困難で、北九州の騒動では長時間都市機能が停止した。さらに 「愉快犯が出れば、治安悪化のイメージが全国に広がり、企業誘致にも影響しかねない」 (県警生活保安課担当者) と、騒動から2カ月でのスピード改正となった。

ご当地事情を反映したとはいえ、全国に誇れないこの条例ばかりは、早くなくなってもらいたい。

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